英国の戦い

 

1944年2月、欧州において史上最大の上陸作戦が決行された。

ヒトラーは2年前の屈辱をはらさんがため、再び大部隊を持って英国上陸を開始したのだ。

そのために必要な海上戦力の充実に、ヒトラーはひたすら努めた。

フランスにて自沈の憂き目にあったリシリュー、ジャンバールを引き揚げ、

イタリアからヴィットリオヴェスト、リットリオ、ローマを回航、

ソヴィエトには、新戦艦ソヴィエッツキーソユーズ、ソヴィエツカヤ・ロシアの建造を最優先

目標に据え、この日に間に合わせてきた。

またドイツ自身も新型戦艦フリードリッヒ・デア・グロッセ、グローサー・クルフュル
トを就航

させ、上陸部隊の援護を行わせるべく出撃させていた。


米国も新型戦艦ミズーリー級4隻はじめ、15隻の戦艦を派遣していたが、英国戦艦群との監視交代の狭間を

つかれた。


フリードリヒ・デアグロッセ
  ドイツ主力戦艦 40センチ砲8門
  同型艦 グローサー・クルヒュルト
ソヴィエツキーソユーズ
  ソヴィエト主力戦艦 40センチ砲9門
  同型艦 ソヴィエツカヤロシア
ヴィットリオヴェスト
 イタリア主力戦艦 38センチ砲9門
 同型艦 リットリオ  ローマ
ビスマルク
ドイツ戦艦 デアグロッセが就航するまでドイツ艦隊の中心であった。38センチ砲8門
同型艦 テイルピッツ


今回は欧州連合に情報戦では分があったようだ。

デアグロッセを先頭にクルフュルスト、テイルピッツ、ビスマルク、その後にソヴィエト、フランス、イタリアの戦艦

群が単縦陣でドーバー海峡に突入すると、防御を張る英国艦隊と同行戦で砲火を交えた。


英国艦隊も新鋭艦、プリンスオブウェールズ、キングジョージ5世、デュークオブヨーク、アンソン、ハウを擁し

その後にフッド、リナウン、レパルス、ネルソン、ロドネーと持てる力を最大限に生かして


防戦したが、半数が前大戦からの老朽艦であるのに対し欧州軍は真新しい新造艦が大半を占めていたこと

が、勝敗を決めた。


重防御を誇るドイツ艦隊は英国艦隊の集中砲火を受けていたが、40センチ、38センチ砲と火力に物を言わ

せこれを押し切った。


プリンスオブウェールズはフィリップ司令長官共々波間に消え、デュークオブヨーク、アンソンもビスマルク

テイルピッツの砲撃で後を追った。


フッド以下の旧式艦も善戦したがソヴィエッツキーソユーズ、ソヴィエツカヤ・ロシアの火力の前

にフッドは轟沈、レパルスも弱い装甲を穴だらけにされ海の藻屑となった。


悲惨だったのはネルソン、ロドネーで、せっかく火力では勝りながらも、速力の遅い両艦はフランス、イタリ

の戦艦群に滅多打ちにされ、仲良く揃って果てた。


欧州軍も集中砲撃を受けたドイツ艦隊は構造物に大損害は被ったが沈没艦はなかった

しかし、ロドネーの巨弾をまとめて食らったイタリア戦艦リットリオが爆沈、ソヴィエト戦艦ソヴィエツカヤ・

シアも
フッド、リナウンの集中攻撃で弾薬庫を射抜かれ爆発、のちに沈没した。

このあいだ、ほぼ壊滅状態にあったイギリス空軍を尻目に、ドイツ空軍は大量の航空機で輸送艦隊を護衛し

上陸を援護した。

ネルソン
かつて世界のビックセブンと呼ばれた40センチ砲搭載艦
速力が遅いのが難点。
40センチ砲9門 同型艦 ロドネー
キングジョージX
英国主力戦艦。 36センチ砲ながら長砲身のため40センチ砲に引けをとらない威力を誇った。
36センチ砲10門 同型艦プリンスオブウェールズ  デュークオブヨーク  アンソン  ハウ
フッド
英国民に最も慕われた巡洋戦艦
防御力が弱いのが難点
38センチ砲8門
レナウン
巡洋戦艦。フッド同様防御力が弱い。
38センチ砲6門 準同型艦レパルス

翌日、後退していた米空母群との航空戦に入ったが浮沈の陸上基地の笠の元に行われる上陸作戦に、

艦載機も有効な攻撃を行えなく、損害を大きくしてしまった。


欧州軍爆撃隊は米艦隊に反撃に出て、空母サラトガ、ホーネット、レインジャー、そして新鋭空母エセックスま

でを撃沈してしまった。


しかし米艦隊の防御射撃はすさまじく、出撃した半数以上が未帰還になるなど、大きな損害を欧州側も被っ

ている。


ドーバーをふさぐ欧州艦隊に対して、反転してきた米戦艦群は反撃に出た。

この艦隊を撃退さえすれば上陸間もない欧州軍にしこたま巨弾の雨を降り注ぎ、形勢を一気に挽回できる。

欧州艦隊は昨日の戦火の傷が癒えず、残弾数も少ないため後退しながらの消極的な戦いに終始した。

おかげで最も被害の多かったビスマルクがついに力尽き、アーレイバーグ中佐率いる駆逐艦隊の肉迫攻撃の

前にその巨体を波間に沈めた。


後もう一歩の米艦隊であったが、ドイツ空軍の猛反撃に加え、Uボートの雷撃網によってアリゾナ、ウエストバ

ージニア、ニューメキシコ、それに新鋭艦サウスダコタが沈没、ニュージャージー、ウィスコンシンが被雷し、撤

退を余儀なくされた。


ドイツは徐々に内陸に侵攻、5月にはロンドンが陥落、英国政府は北に落ち延び反抗の構えを見せていたが

、陸において力を発揮するドイツ、ソヴィエト軍の前に、敗戦を重ねていった。


誰の目からも、もはや英国の運命はともし火にしか見えなかったに違いない。

世界制覇を目論むヒトラーは対英戦がひと段落すると、最後の敵対国家、アメリカに照準を絞り

東の盟友 日本にアメリカ本土挟撃の要請を打診してきた。

アメリカは6月15日を持って対英援助を取りやめ、同時に英国政府のアメリカ亡命を承認した。

ここにいたって、英国は降伏、ついにヨーロッパは形の上でひとつの色に塗り上げられることになる。

 

 

アメリカ


イギリスという盟友を失い、世界戦争において孤立してしまったアメリカだが     

まだ完全に劣勢になったとは言い切れなかった。                  

ヒトラーは世界統一のためなんとしても打倒アメリカを声高に叫ぶのだが、      

大西洋を押し切ってまでの力は現時点ではない。                  

もう一方の敵、日本もおそらくそんな国力はないであろう。              

ルーズベルトは合衆国全域に、「蛮人に母なる大地をけがさせてはいけない」をスローガン

に国民総動員法を議会にて可決させた。                     

もうじき全国から愛国の志士たちが何万と駆けつけてくる事だろう。         

アメリカの戦意も最高潮に達していた。                   

航空機、艦船、戦闘車両にいたるまで、またそれらを動かす燃料、鉄、火薬、そして食料まで

もすべて自国でまかなえるのである。


これがアメリカだった・・・世界で最も富める国アメリカなのである。          

国というよりは大陸と形容したほうがいいだろう。                 

世界を相手にしても決して引けを取らない国。                   

ルーズベルトの自信は決して強がりではなかったのである。             

オペレーション・インディペンデンスと名づけられた作戦が発動された。        

ルーズベルトには、必勝の案があった。                       

余りある戦闘艦と兵力を投入して、西の敵、日本艦隊を初期段階にて殲滅、       

マリアナを奪取した暁には、ついに完成した戦略爆撃機 超空の要塞B29をもって空から日

本を壊滅に追い込む。占領などしない完全なる焦土化である。             

日本人など一人も残さなくていい、空から一方的にたたく文字通りの殺戮・・・そして・・

・そして、あれを つ・か・う・の・だ・・・                   

ルーズベルトは、悪魔に魂を売り渡してでも勝利に固執したのだ。           

マリアナダッシュは開戦後半年、日本の壊滅を一年、遅くても1年半後、その間に暖めておい

た戦力をもってイギリス本土に逆上陸、反抗ののろしを上げる。            

これがオペレーション・インディペンデンスの格子である。              

ルーズベルトは自信に満ちていた・・・   


戦雲の気配

日本国内においても英国の敗戦は大々的に発表された。               

もちろん同盟を結んでいるドイツの勝利であるから各地で勝利の祝いに酔いしれていたが、

これが太平洋での戦果の幕開けになることは、あまり知られていなかった。       

この日、児玉次郎と島田権道は久々に連れ立って料亭で酒を酌み交わしていた。     

昨年の懇親会以来、二人は特別の任務を山本五十六じきじきに仰せつかって、日夜対米海戦

の研究に明け暮れていた。                           

「いよいよ俺たちの研究の成果が試されるときが来た。近く机上演習が行われることになっ

たそうだ」                                  

「井上提督や源田大佐もよくこの思案の趣旨を受け入れてくれて、搭乗員の訓練を行ってく

れている。 

なんといっても艦船の劣勢を補うのは航空機の大量投入だからなぁ。

初戦で勝利をもぎ取れれば、あとは古賀提督の采配次第だ」              

「古賀提督も冷静沈着なお方だ。きっと我々の案の真意を汲み取って指揮していただけるで

あろう」                                   

「しかし、ここだけの話だが・・・」次郎は権道の方ににじる寄ると小声で呟いた。   

「権道、これは噂だが古賀提督は貴様を遠ざけているらしいじゃないか。        

武人としてあくまでも正攻法で米艦隊を撃滅したいとお考えになっているらしい。   

姑息な手を使うと回りには漏らしているらしいぞ」                  

「あぁ、俺も知っている。山本長官が古賀提督の幕僚に推薦してくれたんだが、やんわりと

断られたそうだ。                               

まぁその後角田提督が是非私にといってくれたんで第2戦隊の参謀に取り立てていただいて

、丸く収まったんだが・・・」                           

「そうかぁ、しかし我々の任務はあくまでも敵艦隊殲滅にある。 きっと提督も分かってい

ただけるだろう・・・さぁ、明日からまた忙しくなる、最善を尽くそうじゃないか」次郎は

酒を勧めた。                                

あたりはちょうちん行列で沸き返っている。                     

ふたりはそんなことにお構いなしに黙々と酒を酌み交わしていた。


いよいよ日米開戦が現実味を帯びてきた昭和19年7月、陸海空三軍合同の大机上演習が行

われた。                                   

もちろん初戦の海戦においては海空軍が主役となり、フィリピン及びグァム攻略は陸軍が主

導権を握る。                                 

しかし、空軍という新設部隊の援護なしでは作戦は成り立たず、三軍共同体制は必須という

ことで以前のような確執はなくなっていた。                   

「それでは机上演習を始める。連合艦隊が長年温めていたプランをA、特務研究員の案をB

案とし、演習を行う」山本長官の言葉を皮切りにさっそく取り掛かった。       

A案では実践同様、主力部隊を古賀大将、空母部隊を山口提督、マリアナ防衛を草鹿任一中

将が指揮を取る。                               

一方キンメル役は同じ艦隊派の近藤信竹中将が、ハルゼー役には角田覚治中将が担当した。

演習は5時間にわたって行われたが、航空戦ではなんとか勝利を収めたものの、損失は攻撃

隊を中心に甚大な数にのぼり、主力艦同士の艦隊戦においては、数に勝る米軍に大和、尾張

を撃沈されその他も大損害を被り苦敗をなめる結果になってしまった。                         
最終的にはマリアナ攻略は阻止したものの、第2次マリアナが生起した場合、防衛は不可能

との判定となった」                              

「米軍を過大評価しているのではないかね これでは勝てる戦いも勝てなくなる」古賀提督

の言葉を受けて、審判役の宇垣中将が「ただいまの判定は誤り、米軍の命中率を3分の一に

・・・」っと言いかけたとき、「これは事実に基づく数値である!」凛とした声で一括が入

った。

「事実は事実として受け入れるべきである。 米新型戦艦の性能は大和型に匹敵するもので

ある。 先の大西洋の折にもドイツ新鋭戦艦をあと一歩のところまで追い詰めた実力は侮れ

ない。  それに二倍の戦力差は二乗の法則が指し示すように4倍に等しい。今回の結果は

真摯に受け止めるべきである」情報部部長高田利種中将だった。         

情報部はすでに米新型戦艦の実力を正確に把握していた。              

最新鋭のミズーリー級は主砲こそ40センチ砲だが長砲身のため破壊力は46センチ砲に匹

敵する。                                   

それが3〜4隻、そのほかにも重防御のサウスダコタ級3〜4隻、新型艦のさきがけとなっ

たノースカロライナ級が2隻・・・その主砲はミズーリー級と同等である。       

ということは大和型に相当する主砲を持つ艦が最大10隻、それ以外に長門方と渡り合う艦

が7〜8隻程度・・・あきらかに数の劣勢は否めなかった。              

山口提督は「B案の研究に入ろうではないか。空軍には協力をいただいて、この作戦が実行

できる体制を整えていただいている。 決して絵空事ではなくなった現在、机上演習にてそ

の成果を確かめてみるべきだと思うが・・・」                  

「私が審判役を仰せつかろう」山本長官自らが指揮棒を握った。            

艦隊を指揮するのは古賀提督に代わり角田が、空母部隊は小沢提督、マリアナは源田大佐が

指揮を取った。                                

そしてオブザーバーとして立案者の児玉、島田の両名が各担当部署に付いた。      

それは奇想天外な作戦であった。                         

誰もがその大胆な用兵に目を見張った。                       

怒涛のように押し寄せる米軍を暫時撃退していく様は見るものを唸らせた。       

肝心の艦隊戦は数の劣勢は否めないもののA案より被害を少なく抑えることが出来た。 

否定的な顔をしていた古賀提督も食い入るように経過を見ている。           

次郎も権道も必死であった。                           

祖国防衛のため寝る間を惜しんで考え抜いた思案であった。             

判定は辛くも勝ちを収めた。                            

現時点ではこれが最善であろう・・・負けない戦いを考えてくれ・・・山本長官から頼まれ

た仕事を二人はよく果たした。                           

長官の満足そうな顔が二人にとって何よりの褒美であった。



 

太平洋艦隊

キンメルはようやく自分が勝利の立役者になる番が来たのを実感していた。      

大西洋での戦いのため、自分の艦隊を取り上げられたばかりでなく、日本輸送船が東シナ海

を我がもの顔に通行するのを、指を加えて見守るほかなかった。           

キンケードの小艦隊がフィリピンのマッカーサーのところにあったが、大統領から攻撃をか

けてはならぬと厳命されていた。                         

少ない情報網から日本艦隊の充実振りは聞いていたが、確かな情報はつかめない。    

米国にとって戦いの主力は大西洋をめぐる英国支援であり、太平洋はあくまでも第二戦線・

・・黄色いサルがいかように暴れようとも、米国がひとたび侵攻すれば跡形もなく粉砕でき

る・・・そう信じられていた。                         

太平洋艦隊所属ではアリゾナ、ウエストバージニア、そして空母サラトガ、ホーネットが失

われていた。                                 

しかし今、太平洋に回航されてきた中には最新鋭戦艦『ミズーリー』 『アイオワ』 『ニ

ュージャージー』がある。

また新世代艦『アラバマ』 『マサチューセッツ』 『イリノイ』 『ノースカロライナ』 
『ワシントン』の姿もある。                

その充実振りは艦隊を取り上げられる以前よりはるかに強力になっていた。       

れに旧式化したとはいえ、かつてはビックセブンと言われた『コロラド』『メリーランド

』の40センチ砲搭載艦。                             

また日本の扶桑級戦艦に対抗するために作られた『オクラホマ』『ネヴァタ』『ペンシルバ

ニア』『カルフォルニア』『テネシー』の36センチ砲群が続く・・・         

戦艦15隻中、実に10隻が40センチ砲搭載艦である。

世界最強の艦隊といっても過言ではなかった。
                                 

ミズーリー
アメリカ主力戦艦
攻守速に渡り非常にバランスの取れた傑作艦
16インチ(40センチ)砲9門 同型艦 ニュージャージー・アイオワ
ノースカロライナ
新世代のさきがけとなった戦艦
16インチ砲9門  同型艦 ワシントン
アラバマ(サウスダコタ級)
集中防御方式をとった重装甲艦
16インチ砲9門 同型艦 イリノイ  マサチューセッツ
コロラド
長門、ネルソン級と共に世界のビックセブンと呼ばれた。
この頃にはすでに時代遅れになっていた。
16インチ砲8門 同型艦  メリーランド



航空母艦も新型の『タイコロデンガ』『ハンコック』『フランクリン』『イントピレット』

歴戦の『レキシントン』『エンタープライズ』『ヨークタウン』『ワスプ』の正規空母。 

これに小型空母『インディペンデンス』『プリンストン』が戦列に参加していた。   

搭載航空機数は、約960機に上る。                        

キンメルにとって、杞憂は何もなかった。                      

閑職に甘んじた数年の鬱憤を一気に晴らし勝利の立役者になり、その名声を持って末は大統

領に・・・常にエリート街道をひた走ってきた彼には輝かしい未来しか映っていなかた。

キンメルの元に各戦隊指揮官も戻ってきていた。                  

中には大西洋で戦塵にまみれた提督も少なくない。                 

キンメルはそんな指揮官たちを前にいかにも尊大な態度で微笑みかけた。       

敗戦の将の汚名をきせられた彼らだが、私の威光によって再び輝けるのだ、ありがたく思え

といわんばかりに・・・                             

空母部隊はハルゼー提督に、主力はキンメル自らが率いてマリアナに進撃をする予定だ。

まずは空の戦いから始まるだろうが、戦闘機にて敵を排除しつつ敵主力にむけ艦載攻撃を仕

掛ける。                                   

少しでもダメージを与えて弱ったところを主力戦艦で包み込んで粉砕する・・・
      

数の上でも有利であるから完勝は間違いないだろう。                

徹底的に大艦巨砲主義を植え付けられたエリート官僚のキンメルにとって数字上の優勢は絶

対であり覆る要素はまったくなかったのである。
                 

しかしキンメルにとって大きな誤算があった。
                   

ここ数年、大西洋方面に主力を持っていかれ主戦場とは程遠いハワイにあって、彼の仕事は

あまりにも閑職だったのである。                        

仮想敵を考慮して演習をしたくても艦隊がいないし航空機もほとんどを引き抜かれていた。

アジアにおける日本軍の跳梁も所詮対岸の火事
 ・・そう、ハワイはあまりにも平和すぎた

のである。
                                  

日本艦隊の現在の編成、兵器の進化、そして新型艦の実力に対しての認識・・・どれをとっ

ても曖昧であったのである。

 

タイコロデンガ(エセックス級)
ヨークタウン級の拡大発展型
大きな搭載力と高速を有する量産型空母
同型艦 フランクリン イントピレット ハンコック
レキシントン
元は巡洋戦艦として建造された。電気推進によって高速を発揮する。
準同型艦 サラトガ
ヨークタウン
同型艦 エンタープライズ ホーネット


開戦

米太平洋艦隊がほぼ配置に付き、訓練もたけなわになっている頃、ひとつの大事件が起こ

た。                                     

1944、10月太平洋において孤立化していたフィリピンには、日本海軍の艦艇の目を盗ん

で細々と物資輸送を行っていたが、オーストラリアが早々に中立宣言してしまったためハワ

イから長躯、行われていた。                           

しかしそのほとんどが領海侵犯で検閲を受け、送り返されるか没収の憂き目を見ていたので

ある。                                    

しかしこの日は様子が違っていた。                        

5隻からなる輸送船団は日本の停船命令に従わず、走りつづけた。           

再度、駆逐艦が航路を遮断にかかったときそれは起こった。              

船団の真中を走る3隻がほぼ同時に爆発、一瞬のうちに沈んでしまったのだ。      

しかもそのうちの一隻、フロリダ号は赤十字マークをつけた病院船で、多くの民間人を含む

非戦闘員が巻き添えを食らって命を奪われたのだ 。                

この事件は、『卑劣なる日本海軍が民間赤十字船を魚雷攻撃』という見出しで米国内に大々的

に報じられた。                                

米国政府は直ちに抗議文を日本政府に打診し、かくなる野蛮な国家には厳格なる処罰が相応

しいと、一方的に国交の断絶を行ってきた。                    

ここに至って日米の開戦は避けうることの出来ない局面に至ったのである。       

世に言うフロリダ号事件は、現在ではアメリカ政府が仕組んだ謀略である事が通説となって

いる。


『臨時ニュースを申し上げます。本日11月3日、日本は米国との国交改善を図るも、東シ

ナに対する米国の内政干渉のため、南方資源輸送路に重大な危険を伴いつつあり。

よって本日を持って国家の権益保護の名目で戦闘状態に入れり・・・』                        
国内の報道は日米が戦闘状態に入ったことを報じていた。              

米潜水艦から東シナ海を往来する輸送船団を守るには、フィリピンはぜひとも攻略しなくて

はならない。                                 

すでに作戦要綱は出来上がっている。                       

直ちに待機命令の出ていた山下、本間の両兵団に出撃命令が出され、海軍も攻略支援として

第2,3.4機動部隊及び西村中将指揮の第4艦隊(攻略支援艦隊)を急派した。


フィリピン・・・マッカーサー率いる第5軍が守備についていた。           

昭和16年時、東洋の権益を守るため8万を超える大部隊が配置されていたが、完全な経済

封鎖のおかげで今は見る影もない。                       

今は太平洋に孤立したアラモ砦であった。                     

すでに孤立してから丸3年、いざ開戦になった折は真っ先に攻撃される運命にあることは一

兵卒に至るまで染み渡っていた。                        

マッカーサー自身はそれでも威厳を保っていたが、ルーズベルトからほったらかしにされた

恨みは忘れることが出来ない。                         

死するときはこのフィリピンで潔く・・・彼の頭にはそれ以外に思い浮かばなかった。  

開戦から10日目の11月13日、平穏を保っていたマニラに空襲警報が鳴り響いた。  

日本第3及び第4機動部隊から発艦した戦爆連合が首都マニラを襲った。       

迎撃に当たる米戦闘機はP−40ウォーホーク。                  

すでにこの当時旧式化著しく、日本の疾風の敵ではない。               

一撃の下に粉砕され、マニラは爆弾の雨にさらされた。                

陸軍第3軍山下兵団がリンガエン湾から強襲上陸をかけてくる。            

首都マニラでの防戦は不利なように見えた。                    

「将軍、退避しましょう。 この第5軍だけで日本の精鋭に立ち向かうのは無理です。  

バターン及びコレヒドール要塞にこもりましょう。」側近の助言に従いバターンに退避しよ

うとした矢先、信じられない報告が彼の元に届けられた。              

「コレヒドール要塞が壊滅しました!」バターン、コレヒドール要塞はマニラ湾を睨む突き

出た半島に難攻不落として建設されていた。                   

ここを落とさない限りマニラ湾に艦船を引き入れることは難しい。          

米軍はここに難攻不落の要塞を立て巨砲を数十門選べてマニラの備えとしていた。   

しかし日本軍は最後のよりどころとなる両要塞に対して、米陸軍が立てこもる前に先制攻撃

をかけてきたのだ。                              

バターン、コレヒドールに対して大西瀧次郎提督指揮の日本第2機動部隊は全力を持って航

空攻撃を敢行していた。                            

降下爆撃によって視認できる砲台はことごとく粉砕され、要塞からは火の手が上がっている



「派手にやっているな。航空攻撃が終了したら艦砲射撃にて要塞を制圧する」      

西村祥治中将は第4艦隊所属の4隻の戦艦にバターン及びコレヒドールへの砲撃を命じた。

旧式化したとはいえ戦艦伊勢をはじめ日向、山城、扶桑の36センチ砲合計48門の破壊力

はすさまじく、要塞はなすがままの破壊を甘受している。              

時折艦砲射撃を阻止しようと飛来する米爆撃機には艦隊護衛の任についている空母龍譲から

飛び立った紫電改にことごとく蹴散らされていた。                

西村艦隊には艦隊を守る目として水上機母艦『瑞穂』を伴っていた。          


『瑞穂』は当初ディーゼル機関を搭載したため随伴能力に問題を抱えていたが、主機関をタ

ービンに代えたため艦隊に追従できるようになった。               

また、高速の瑞雲24機が搭載され全機発艦20分の能力がある。           

夕闇迫ろうとしていたとき、偵察に上がっていた瑞雲4号機は、眼下に闇夜にまぎれてリン

ガエンの輸送船部隊に突入を敢行しようとしている米艦隊を発見した。       

「山下二飛、艦隊に連絡だ。我、リンガエン湾に突入せんとす敵艦隊を発見、巡洋艦3、駆

逐艦7の模様・・・」 瑞雲に発見されたのはキンケードの東洋派遣艦隊であった。   

闇にまぎれて上陸間もない輸送船部隊を急襲しようとしていた。           

西村はすぐさま哨戒中の巡洋艦部隊に連絡、現場に急行させるとともに輸送船団にも通報し

た。                                     

扶桑
旧式化してはいたが艦砲射撃では威力を発揮した。
日本戦艦  36センチ砲12門
山城
扶桑の準同型艦
日本戦艦  36センチ砲12門
伊勢
扶桑方の欠点を補って建造された。西村艦隊の旗艦
日本戦艦   36センチ砲12門  同型艦 日向
愛宕
日本巡洋艦  20センチ砲10門
同型艦 鳥海 摩耶 高雄
瑞穂
水上機母艦
「瑞雲」を搭載し、艦隊の目として偵察に活躍する



輸送部隊の護衛用として『伊吹』『鞍馬』の装甲巡と駆逐艦一個戦隊を分派してある。  

明けて7日深夜、橋本信太郎少将座上の『伊吹』は、その電探に艦影を映し出していた。

装甲巡2、駆逐艦4からなる橋本戦隊は輸送艦の盾になるように、突入してくるキンケード

の艦隊にT字を描いている。                          

折りしも漆黒の闇のため米艦隊はまだこちらの存在に気がついていないらしい。    

米艦隊はキンケード少将座上の『ノーザンプトン』を先頭に『ポートランド』『ペンサコラ

』駆逐艦7隻が単縦陣で続く。                          

彼らはフィリピン派遣艦隊としてマッカーサーの元にあったが、本国に帰ることが出来なく

なりそのままフィリピンに錨を下ろしていた。                  

おかげで近代装備を身につける機会がなく、レーダーを搭載していない。        

キンケードはいきなり闇の中に砲弾の発射炎を確認、先制を取られたことを知った。   

「前方に敵艦隊、敵勢力は不明!T字を描かれています」               

「夕方、接触した偵察機に報告されたようだ・・・一戦も交えずに後退することもあるまい

・・・全艦取り舵、同行戦に入れ」                         

艦が心もち左に傾斜し向きが変わり始めたころ、日本軍の最初の一撃が襲ってきた。   

『ノーザンプトン』は回頭をしてたので初弾は食らわなかったが、2番目に位置していた『

ポートランド』の周辺に無数の水柱が上がった。日本軍の電探射撃はことのほか正確であっ

た。


ペンサゴラ
米巡洋艦。日本の重巡に対抗するため無理して20センチ砲10門を積んだためきわめて防御が弱くなった。  
ノーザンプトン
米巡洋艦。20センチ砲を9門に減らして防御力を高めた。
ポートランド
米巡洋艦。防御力を強化したノーザンプトンの発展型。
魚雷装備を撤廃し対空装備を増設した。


橋本信太郎少将は迫り来る米艦隊に向けて全艦を横向きに並べる、理想的なT字戦法で迎え

撃った。                                   

一番艦に向け『伊吹』『鞍馬』の15,5センチ砲合計36門を集中させた。      

「撃ち方はじめ!」頃あいを見計らって射撃を開始する。               

こちらの発射炎を視認して気がついたのだろう。                  

その一番艦が回頭を始めた頃着弾した。                      

敵2番艦周辺に無数の水柱が上がって艦影を隠した。                

「よし、本艦は敵一番艦に目標変更、『鞍馬』はこのまま2番艦を攻撃、水雷戦隊魚雷撃ち

方はじめ!」橋本は矢継ぎ早に命令を下す。                    

まもなく水雷戦隊から魚雷発射完了の報告が入る。                 

「敵艦隊回頭完了」電探は正確に敵艦隊の動向をつかんでいる。            

まもなく敵艦隊からの砲撃炎が見て取れた。                     

「敵二番艦に命中弾4、一番艦にも命中弾3!」敵は相当混乱しているのだろう、まだまだ

遠弾である。                                 

そのうち「魚雷命中!二,四,五番艦に水柱!」戦いは先制をとった日本艦隊に有利に展開

しつつあった。



キンケードは顔面蒼白になりながら戦いを指揮していた。              

「日本艦隊にはよっぽど優秀なレーダーが備わっているに違いない。 

星弾を一発も撃たずに攻撃をかけてくる。 それに恐ろしく正確だ・・・」       

フィリピンに派遣されてから3年間、彼の艦隊はまったく封じ込められたまま、また石油の

供給もなかったため訓練もままならず、すっかり時代遅れの艦隊になってしまっていた。

おかげで、この3年間の付けを一気に払わされる結果になってしまった。        

また次の斉射が『ノーザンプトン』を襲う。                     

着弾があるたびに2〜3発、多いときは5〜6発を一時に食らい上部構造物は穴だらけにな

り、そこかしこから炎が上がっている。                      

後方よりひときわ大きな爆発音が轟いた。                     

「『ポートランド』に魚雷命中!後続艦にも命中しています」             

魚雷を受けてはもはやこれまでか・・・「全艦に告ぐ!戦線を離脱する」        

魚雷を受けた『ポートランド』ほか駆逐艦2隻を残して離れようとするが、さらに『ペンサ

コラ』も集中攻撃を受け行き足が止まったらしい。                 

敵艦隊に一撃も食らわせることなく撤退するのは忍びないが、全滅を避けるのも指揮官の務

めと自分に言い聞かせた。                            

「残存艦は何隻だ?」                              「

本艦のほか駆逐艦3隻であります。長官、進路はいかがいたしますか」         

実際、フィリピンには戻る港は残っていないようだ。                 

キンケードが思案していると、左舷より無数の閃光が走り、数秒送れて雷鳴のような砲撃音

が轟いた。                                  

西村提督は、敵艦隊発見の報に手持ちにある重巡洋艦『愛宕』『麻耶』『鳥海』『高雄』を

現場に派遣してきたのだ。                           

先ほどより大きな水柱が『ノーザンプトン』を襲った。                

木の葉のように揺れる船体にキンケードは自らの使命もこれで終わると覚悟を決めた。 

打ち続く命中弾に船体がへし折れるまで反撃を諦めなかった。             

夜明けにはすべての戦闘は終わっていたが、そこには一隻のアメリカ艦船も認められなかっ

た。                                     

公称リンガエン沖海戦は日米が始めて合間見えた海上戦闘であったが、日本側の圧勝で幕を

閉じた。                                   

キンケードの艦隊は一発の命中弾を出すこともなく永遠に姿を消したのであった。


フィリピンのマッカーサー軍は弱敵ではなかったが、3年にもわたり本国から見捨てられた

格好になっていたため、極端な物資不足に悩まされていた。             

マラリアが流行しても薬もなく、命を落とすものも少なくない。            

しかし最大の要因はフィリピン国民にあった。                   

大東亜共栄圏を謳い文句に進駐した日本はその支配地域に軍政をひくことなく現地の独立を

推進したのだ。                                

確かに傀儡政権としての政府であったが、欧州の支配から逃れた独立国家としての体裁は整

っていた。                                  

フィリピン国民にとっても民族の独立は悲願であったので日本軍の侵攻は喜ばしいことであ

ったのである。                                

日本軍が上陸するや、フィリピン国民はもろ手を上げて解放軍としての日本軍を歓迎した。

日本軍もそのような状態であると事前に情報を入手していたので、フィリピン軍との交戦を

避け、彼らを向かいいれる体制をとっていた。                    

必然的に士気は大いに下がり米軍はほとんど抵抗することなく降伏の道を選んだ。   

フィリピン進攻はほぼ1週間で全戦闘を終了することとなる。            

威厳高いマッカーサーであったが、彼や米軍兵士に対しても山下、本間両将軍は丁重に扱っ

たため、後の終戦条約の折、大いに尽力を尽くしたといわれている。

 

                            
    

 

 

 

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