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架空戦記

連合艦隊1944  鋼鉄の巨人たち

防空駆逐艦 『綾波』『響』

連合艦隊1944 鋼鉄の巨人たち

栄光の巨人たち

ここでは劇中に登場する各艦艇を模型で再現してみました。

完全に架空の艦船もあるのですが、ほとんどの艦は実在艦です。

実艦と違った遍歴を経て甦った勇姿を楽しみたいと思っています。

各艦ごとのショートストーリーと用兵の変換、

模型製作に当たっての逸話も含めて紹介していきたいと思います。

連合艦隊1944 『鋼鉄の巨人たち』    戦 歴

1928年、それまでの常識とは一線を画した駆逐艦が産声を上げた。

その後の世界の駆逐艦に影響を与えることになる『吹雪』型駆逐艦である。

速力37ノット、主砲12.7センチ砲3基6門、61センチ魚雷3基9門を誇った。

以後の日本駆逐艦のベーシックスタイルとなった吹雪型は一般に特型と呼ばれ

24隻の大量建造となる。

しかし1940年代に入り、艦歴も15年以上を数えるようになると、列強最新鋭駆逐艦と

比較し、さすがに老朽化がいがめなくなり他の老朽艦同様、廃艦案が浮上してきた。

その扱いに苦慮していたところ、

急速に充実を図っていた空母部隊の護衛専門艦にと白羽の矢が当たったのだ。

主砲はじめすべての武装をおろし、再設計しなおして新型武装を搭載できるように改造された。

改造後は防空直衛専任艦として雷装をすべてはずし、3式12センチ高角砲4基8門、

37ミリ4連機関砲5基20門、近接用25ミリ単装機関砲多数を搭載、電探と連動して

敵機に砲弾を送り込みます。

尚、特型以前の老朽艦も、そのほとんどが防空艦に改造されていきました。

その後、本格的防空艦として『秋月』型が就航しますが、建造費の問題で12隻で打ち切り、

以後、安価でしかも大量に建造できる丁型に移行していきます。

防空専任艦『綾波』

戦史

開戦と同時に、両艦は小沢率いる第3機動部隊に配属されます。

第3機動部隊は『赤城』『加賀』『蒼龍』『翔鳳』を基幹に構成された、旧式ながらも

最大の艦載機搭載力を誇る艦隊でした。

開戦壁頭のマリアナ沖大海戦では空母『蒼龍』が爆撃により中破の損害を出しますが

それ以外の攻撃をことごとく退け、艦隊を守り通したのです。

しかし45年に中部太平洋で生起したミッドウェー沖海戦で、この2艦は異なった運命を

歩むことになるのです。


−−−後退戦を展開する空母『加賀』−−−

「第25防空隊指令より入電!『加賀』退艦者は『綾波』『敷波』に移乗・・『雷』『響』は

近海地域の索敵を続行せよ」

『響』艦長 津吾井少佐は戦隊指令より命令を受信した。

『綾波』が『加賀』に接艦してあわただしく乗員を乗艦させている。

こんな時に雷撃を受ければひとたまりもない。

「水中電探を注視せよ!敵潜の進入を許してはならんぞ!」

責任感の強い津吾井は部下に注意を促した。

この日、第3機動部隊は敵の猛攻を一手に引き受け、大損害をこうむったのだ。

『翔鳳』沈没、『赤城』『加賀』『蒼龍』ともども被爆し、炎上、機関停止をして

洋上を漂っていた。

曳航準備を整えていた艦隊であったが、努力のかいなく追撃してくる敵艦隊発見の報と共に放置せざるおえなくなった。

ようやく機関が回復し、離脱可能となった『加賀』を護衛してここまで落ち延びてきたが、所詮10ノットしか出ない

『加賀』は他の2艦を葬った敵戦艦群に再度補足されてしまったのだ。(14話、15話)

ハイエナのように忍び寄る米潜水艦を次々に撃破し、ここまで後退した第3機動部隊残存艦であったが

その命運も尽きようとしている。

「戦隊指令より入電!敵艦隊捕捉!貴艦は『雷』とともに、第八戦隊『榛名』『霧島』の指揮下に入り防衛線を

展開せよ!なお戦隊旗艦『夕張』は第28駆逐隊を糾合し、八戦隊の近接防御を行う!」

『夕張』が『響』の前方に展開、後ろに『雷』その後方に28駆の丁型駆逐艦が追従する。

その総数15隻・・・

「艦長、今となっては仕方のないことですが魚雷発射管がないのは痛いですな・・本来なら敵戦艦に肉薄して

必殺の酸素魚雷をお見舞いしてやるものを・・」

航海長の千田大尉がぼやくのを津吾井はたしなめた。

「われわれの本分はあくまでも空母の護衛だ。なんとしてでも加賀を守りきらねば・・その前に霧島、榛名の

前面に展開して敵の雷撃を食い止めなければならん。千田大尉、操艦を頼んだぞ!」

「は!心します。」

まもなく戦艦同士の打ち合いが始まった。

巨大な水柱が桂林の崖峰のように林立する中、『夕張』を戦闘に単縦陣で進撃を開始する。

「敵軽巡および水雷戦隊突入してきます!20隻以上!」

「防御射撃はじめ!敵の侵入を許すな!」

各艦はその主砲となる高角砲を矢継ぎ早に繰り出しながら応戦体制に入る。

命中弾が敵艦上に炸裂し盛大に火炎を吹き上げているのが目に入る。

4秒おきに繰り出される砲弾は弾数では米艦隊を圧倒していた。

しかし、航空機に対しては絶大の威力を発揮する3式12センチ砲だが

巡洋艦クラス相手では所詮豆鉄砲のようなもの・・・命中は確認するがどれほどの損害を与えているか・・・

しかし、多数の命中弾を食らい、敵一番艦が炎を引きづりながら離脱していく。

また敵駆逐艦と思われる5,7番艦は当たり所が悪かったのだろう、大きな火球を膨らませたと思うと

あっという間に爆沈していく。

「そうだ、その調子だ・・一隻たりとも・・・」

津吾井艦長が言い終わらないうちに船体が一度飛び跳ね、そして海面に叩きつけられる衝撃を味わった。

水雷戦隊の突撃が芳しくないと見て、米重巡洋艦の砲撃をこちらに振り向けたに違いなかった。

善戦を続けていた日本駆逐艦隊であったが桁違いの20センチ砲相手では分が悪い。

後方では戦時量産の丁型が苦戦を強いられている。

艦隊決戦はまったく考慮に入れられていないため、装甲が薄い。

米艦隊の20センチ砲を受け止められるわけがなかった。

103号、108号艦が瞬く間に炎に包まれ落伍していく。

前方を行く『夕張』にも巡洋艦の砲弾が炸裂したのだろう・・盛大に黒煙を吐き出し傾斜している。

「戦隊指令(夕張)より緊急電!われを顧みず反撃せよ!」です。

伝令の顔が恐怖でゆがんでいる。

その時また新たな命中弾を食らい『響』が地震さながらに揺さぶられる。

「被害状況知らせ!応急班急行せよ!」

津吾井は声をからして命令を出す。

艦橋内にも、もうもうと黒煙が入り込み咳き込み倒れるものが続出した。

「敵艦隊肉薄します!防衛線突破されました!」

「しまった!砲撃の手を緩めるな!先頭艦を狙え!」

津吾井艦長は鬼神のごとく仁王立ちになりながら檄を飛ばす。

まもなく『榛名』に、そして『霧島』に数本の魚雷が命中する水柱が見て取れた。

あぁ・・・絶望のため息と共に電探員の新たなる悲鳴が・・・

「敵の後続艦発見!さらに戦艦複数!」

しかし吉報も飛び込んできた。

「八戦隊への通信傍受!『加賀』の乗員、移乗完了、これより離脱にかかる」です。

薬師神、後は頼むぞ!無事乗員を送り届けてくれ・・・

津吾井は兵学校同期の『綾波』艦長 薬師神少佐に健闘と最後の別れを口にした。

「これより我が響は敵を引きつけるため、砲撃を行いつつ後退する!みんながんばれ!」

血の海になった艦橋上で仁王立ちになって津吾井艦長は皆を奮い立たせた。

ミッドウェー大海戦の序盤で生起したこの海戦は、結果的には日本の惨敗であったが

主力艦同士の海戦までの時間を稼ぎ、結果日本側の辛勝をもぎ取ったのであった。

『響』はついに生還しなかった。

8月30日をもって除籍になるまで『綾波』艦長 薬師神少佐は港に立ち続けていたという。


−−−−ショートストーリーで紹介してみました−−−−





























防空専任艦 響

綾波